【SDGs×森林】森を守るための取り組み・私たちにできることとは?
森林は地球環境の要であり、私たちの生活を支える大切な存在です。
最近ではSDGs(持続可能な開発目標)でも「陸の豊かさも守ろう」(目標15)として、森林など陸上の自然環境の保全が掲げられています。
では、実際に森を守るためには、どのような取り組みが行われているのでしょうか?
そして、私たち一人ひとりには何ができるのでしょうか?
本記事では、森林保護の現場で起きている課題や対策をやさしく解説しながら、誰にでもできるアクションについて考えていきます。
Index
SDGs目標15「陸の豊かさを守ろう」について
SDGs(持続可能な開発目標)の目標15は、「陸の豊かさも守ろう(Life on Land)」と題し、森林や生態系の保護、生物多様性の維持を目指した取り組みを掲げています。
目標15が掲げる主なテーマ
•森林の持続可能な管理
•砂漠化・土壌劣化への対応
•生物多様性の保全
•山地生態系の保護
日本は国土の約3分の2が森林という「森の国」。
けれど、林業の担い手不足や過疎化により、手入れの行き届かない森が増えています。
さらには、シカやイノシシによる獣害(じゅうがい)も深刻で、育てた木が食べられたり、森が立ち枯れしたりと、自然と人との距離が広がりつつあるのです。
SDGsと森林保護の重要性
森林は二酸化炭素を吸収して気候変動を緩和し、豊かな生態系を育む「地球の緑のゆりかご」です。
しかし世界では、人口増加や農地拡大などにより森林破壊が深刻化しています。2010年から2020年の10年間で、世界の森林面積は年間平均約470万ヘクタールずつ減少しました。
九州の面積(約367万ヘクタール)を上回る規模の森が毎年消えている計算で、地球規模で気候変動や生物多様性の危機につながっています。
こうした背景から、SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」において森林保護が重要テーマとなっています。
日本の森林が直面する課題
一見、森林資源に恵まれているように思えますが、その実態には課題も存在します。
戦後に植林された人工林が多く、現在は木が成熟して本来なら利用や間伐(かんばつ:間引きのための伐採)の時期を迎えています。
しかし、林業の担い手不足や木材の輸入増加などで適切な管理が行き届かず、手入れされない森が増えているのです。
手入れ不足の森林は、木が密集しすぎて日の光が地面まで届かなくなり、生物多様性が損なわれたり、大雨の際に土砂災害のリスクが高まったりする恐れがあります。
そしてもう一つ、見逃せない課題が野生動物による森林被害です。この獣害(じゅうがい)の問題について、次に詳しく見てみましょう。
野生動物による「獣害」問題とは
冬の森で木の皮を食べるニホンジカ(写真)。
こうした樹皮剥ぎによる森林被害が各地で発生しており、近年獣害(じゅうがい)という言葉でこの問題がクローズアップされています。
獣害は、シカやイノシシ、サル、クマなど野生の鳥獣が人間の生活や産業に及ぼす被害のことで、特に農作物が食べられてしまう農業被害
として知られています。 しかし実は、この獣害は森林にも大きな影響を及ぼしています。
シカによって木の皮が剥がれて立ち枯れしてしまったり、植えた苗木や下草がすべて食べられて森が育たなかったりと、被害が広がっているのです。
林野庁の調査によれば、令和5年度には全国で約5千ヘクタールもの森林が野生鳥獣による被害を受け、その約6割はシカによる食害・樹皮剥ぎ被害が占めていました。
日本ではシカの天敵だったオオカミがいなくなり、狩猟者の減少や里山地域の過疎化も相まってシカが増え続けています。
その結果、かつて森の奥深くにはあまり現れなかった動物たちが、広範囲に生息域を広げて森林の生態系や人間の営みにまで影響を及ぼすようになっているのです。
森を守るための取り組み例
こうした課題に対処し、森林を守るために、国から地域まで様々な取り組みが進められています。
主な例をいくつか見てみましょう。
野生動物対策の強化
シカやイノシシによる被害が深刻な地域では、防護柵(ぼうごさく)や電気柵の設置によって野生動物の侵入を防ぐ対策が取られています。
また、捕獲したシカやイノシシをジビエ(野生肉)として有効活用する試みも広がっています。
最近では遠隔監視カメラやセンサーを用いたスマート捕獲技術の導入など、テクノロジーを活用した新たな獣害対策も注目されています。
森林の適切な管理
企業のCSR活動や地域の住⺠による取り組みとして、森づくりへの参加が増えています。
例えば、企業がSDGsに注力している自治体と協定を結んで、社有林や「○○の森」といった名前の森を育てるプロジェクトに参画するケースがあります。
また、森林ボランティア団体やNPOが中心となって、地元の里山で植樹や下草刈りなどの保全活動を行う例も各地に見られます。
こうした官⺠連携や地域ぐるみの活動が、森林保全の裾野を広げています。
また、学校教育や自然体験イベントを通じて森の大切さを伝え、都市住⺠に向けて情報発信を行うなど、環境教育や普及啓発の取り組みも進められています。
SDGsと森林保護を考える。私たちにできることとは
では、こうしたSDGs×森林保護の取り組みに対して、私たち一人ひとりや組織として具体的に何ができるでしょうか。
地方自治体として
自治体職員であれば、行政の立場から森林保全に取り組むことができます。
例えば、国から交付される森林環境譲与税などの資金を活用して、間伐や植林といった森づくり事業を推進することが可能です。
また、地域の森林ボランティア団体や専門の企業と協力して、里山保全プロジェクトや環境教育イベントを企画することも有効でしょう。
さらに、鳥獣被害対策に関する計画を策定し、地域の実情に合わせて電気柵の設置支援や捕獲チームの育成を行うことで、獣害の軽減にも貢献できます。
企業として
企業のCSR担当者であれば、自社の社会貢献活動の一環として森林保護に関わるSDGsの取り組みを計画できます。
例えば、自治体やNPOと連携して社員ボランティアによる植樹イベントを開催したり、企業の名を冠した「○○の森」を育てる協定を
自治体と結んで定期的な森の手入れを支援したりすることが考えられます。
また、自社の事業で使用する紙や木材を森林認証(FSC®など)取得製品に切り替えるなど、調達の面で森に優しい選択をすることも重要です。
自然を愛する個人として
最後に、一般の私たち一人ひとりにできることもあります。
身近なところでは、森林環境に配慮した商品を選ぶことがその一つです。
例えば、木材や紙製品を購入する際に違法伐採されたものではなく、第三者認証された適切に管理された森林から生産された商品を選ぶことで、森林保全やSDGsに貢献できます。
また、地域で開催される森林ボランティア活動(植樹や里山の下草刈りなど)に参加してみるのもおすすめです。
実際に森に入ってみると、自然の豊かさを五感で感じられ、自分ごととして森を守る意識が高まるでしょう。
さらに、SNSやイベントを通じて森の大切さを周囲に発信したり、寄付やクラウドファンディングで森林保護団体を支援したりすることも立派な貢献です。
株式会社グリーンコップの取り組み
福井県の株式会社グリーンコップでは、以下のような取り組みを行っています。
森林保護とSDGsを考える上で、ぜひ参考にしてみてください。
森林保護資材の製造
当社は、「自然共生の森づくり」を掲げ、野生動物からの森林保護・森林の再生につながる様々な資材を製造・提供しています。
特に、増え続けるシカやクマによる獣害対策に力を入れており、木の幹を守るネットなどの製品を通じて、森林を野生動物の被害から守るお手伝いをしています。
STOP&GO方式による「良品製造」
グリーンコップでは、不良品0%を目指したSTOP&GO方式を採用しています。
これは、製造工程の各段階で常に見極めを行い、必要に応じてラインを一時停止してでも質を優先する仕組みです。
加えて、現場とオフィスの連携をスピーディかつリアルタイムで行うことで、改善と修正のサイクルを迅速に回しています。
無駄のない「受注生産制」
グリーンコップでは、一定量の在庫を確保しつつ、受注生産制を導入しています。
これにより、在庫ロスを減らし、資源の無駄を最小限に。さらに、受注から納品までのリードタイムを大幅に短縮し、即日生産対応も可能な体制を整えています。
学校施設への環境貢献
地域に根ざしたSDGs活動として、食育に取り組む小学校への協力も進めています。
野菜の育成を補助する資材を提供し、プランニングから設置まで、学童と一緒に関わりながら進める構想です。
商品を通じて、子どもたちと“育てる楽しさ”や“自然とのつながり”を体験する場を生み出します。
リサイクルと社員主体のエコ活動
製造時に出る端材は、提携企業でペレット(再利用可能な原料)化され、廃棄ゼロを目指した再資源化に活かされています。
また、社内では「エコひろば」という制度を設け、社員一人ひとりがゴミの完全分別や持ち込みリサイクルを日常的に実践。
環境意識の共有を社内文化として根付かせる工夫も続けられています。
グリーンコップでは、こうした取り組みを通じて、自治体や企業とも連携した森林保全活動を推進していきたいと考えています。
行政主体の獣害対策プロジェクトへの技術提供や、企業のCSRによる森づくり支援など、私たちにできることは積極的に協力させていただきます。
森の課題は一社だけで解決できるものではありません。
だからこそ私たちは、連携を大切にし、様々な立場の皆様と力を合わせてSDGsの目標達成に貢献していきたいと願っています。
森を未来へ引き継ぐために
森林保護をはじめとしたSDGsの達成は地球規模の課題ですが、その担い手は私たち一人ひとりであり、企業や自治体でもあります。
お互いに知恵と力を出し合い、協力しながら、森を未来の子どもたちに引き継いでいきましょう。
森を守ることは私たち自身の暮らしと未来を守ることにもつながります。
森林や獣害対策に関するご相談やパートナーシップのご提案があれば、お気軽にお問い合わせください。
共に力を合わせて、持続可能な森づくりを実現していきましょう。